その土地の酒を表現する言葉

色々なところで色々な人がオンラインの企画を次々に行っておられるので、
時間の許す限り、興味のある内容のものには参加しようと思っています。

一昨日には、広島というエリアを題材にしたトークイベントに参加しました。
「地域性」という言葉が私のなかではとても大きい意味を持つので、
広島に限らず、地域を括った議論というのは、とても意義があると思います。
たまには、このような気楽なオープンフォーラムも結構ですが、
本来は、もっと真剣に本気の議論をすべき課題であると私は思っています。

2年前に、酒蔵ツーリズムに関するセミナーを行った時、
海外事例として、カリフォルニアのワインツーリズムについて、郭山松美さん(旧姓)に講師をして頂きました。
私のなかでとても印象に残っている講義です。
ナパやソノマのワインツーリズムはどうして現在のような成功をおさめたのか。
個々のワイナリーの品質向上とブランディングの努力はもちろんベースとなるわけですが、そのなかに大きな要素としてあるのは、地域の同業者の組合の結束力と、ロバート・モンダビというリーダーの存在があると彼女は言います。
アメリカのワイナリーというものは、自己中心的で個性を競い合うイメージがありますが、ナパのワイナリー組合は非常に結束力があり、地域を良くするための話し合いを徹底的に行い、協力して地域の魅力発信につとめた、それが地域ブランドを作り上げたというのです。

確かに、日本酒の様子を見ても同じような傾向は見てとれます。
大手が幅をきかせて県全体としてのまとまりを欠いている県というのは、
時代の流れにいつか後れを取ってしまいがちです。
逆に、決して清酒県としての実績はなくても、求心力のあるリーダーに恵まれて県としてまとまり、一緒になって地域を盛り上げようと努力した県は、
いつか立派な地域ブランドを築き上げています。
山形県はその秀逸な例であると思います。

私は、地域とは必ずしも行政区画と一致する必要はないと考えます。
すべてを県の単位でまとめるのは不可能です。
歴史的、文化的、風土的な共通項を持つ地域が集まれば良いと思っています。
GI白山、GI灘五郷、GIはりま。
これが自然な地域のあり方だと思います。

さて、地域での議論を深める意義は何でしょうか。
生産者であれば、当然それは地域ブランドの向上ということになるでしょう。
ナパ・ソノマはそれをツーリズムという形で盛り上げることに成功しました。

一昨日に参加した広島県産酒の会では、
広島の酒の特徴を言葉にしたら、どんな表現が適当だろうという議論がありました。
とても良い議論だと思って聞いていました。
でも、答えなんて出るわけないとも思って聞いていました。
広島のなかでも、エリアによって酒の特徴が極端に違うからです。
広島の酒と言えば、ふたこと目には軟水醸造の旨口酒、みたいな表現です。
でも、県北の酒からは全然そんなイメージは湧いてきません。

また、最近各社がせめぎあっている純米吟醸クラスの酒は、
全国的に酒質が同質化しているので、
広島の酒というよりは、どの蔵の酒かと言った方が適当。
そこには広島でしか出せない地域性はあまり感じられません。

恐らく、地域の特性というものは、
地元の日常酒に表現されているものだと思います。
情報化と交通インフラの発展によって、日本が狭くなり、
地域文化が消えてゆくとともに、
地元の日常酒需要も減り、
地域の特徴的な味わいも消えつつあるのだと思います。

ですから、
土地の酒を表現する言葉とは、
今ある酒のなかから見つけ出すことは不可能です。
消えていってしまった地元の食文化をもういちど振り返り、
皆で一緒になって探し出すべきものだと思うのです。

もう一度言います。
土地の特徴は、今ある酒のなかから見つけ出すべきものではなく、
皆で一緒になって探し出し、改めて作り上げるべきものだと
私は強く思っています。































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