川崎の石澤さん、篠田先生

何事も、思いついて始めるのは易しいですが、
それを長く続けるのは難しいものです。
私の人生なんぞは、そんな失敗の繰り返し。
ほんの小さなことですら、なかなか長くは続きません。
そんな自分を知っているからこそ、
目立たなくても地道にコツコツと積み重ねている方を見ると、本当に立派だと思えます。
市井には、そういう方々が連綿とおられます。

川崎市の元住吉駅から商店街を少し行ったところにある、石澤酒店という酒屋さんが閉店したと聞きました。
50代のご夫婦がお母様と一緒に営んでおられる日本酒専門店です。
石澤ご夫妻とは、私が業界に入ってから30年来のお付き合い。
篠田次郎先生の私塾で共に酒との付き合いのイロハを教わりました。

篠田先生の事務所から業界に巣立った若者は蔵元・流通・飲食店まで沢山おられます。
最近は目が悪くなられて、目立った活動も控えておられますが、
以前はこれからの業界を担う若者の先頭に立って、色々と教えて頂きました。

篠田先生の素晴らしさは、私達に酒との付き合いを教えて下さったことだと思っています。
別に酒の知識をつける講義をするわけではない。
ことさらに経営のコンサルをするわけでもない。
記憶にあるのは、
先生の事務所に集まって酒を飲み、歌をうたい、大いに語り合ったという思い出が大半です。
でも、何となく今でもその時を一緒に過ごした方々や、先生の笑顔が心に残り、それはそれは暖かい心持ちにしてくれるのです。
人の記憶に残ること、人のためになることって難しい。
これも、なかなか自分にマネのできるものではありません。

さて、石澤さんの話に戻りましょう。
石澤さんのご夫妻はとても仲良しでした。
いつも笑っているご主人と奥様。
ふたりとも日本酒が大好き。
そして一生懸命。
地道にコツコツと年月を積み重ねて、
お客様との関係には心を配って、定期的な酒の会を続けておられました。

そんな一生懸命なご夫婦の姿に共感した蔵元は、
毎年、大晦日の日にお店の店頭に立って量り売りのお手伝いをしていました。
もちろん、それなりの数量を捌いて下さっていたのでしょうが、
大晦日の日に何年も蔵元が店頭に立つなんて、そんなに出来ることではありません。

地道に、コツコツ、一生懸命生きている人のところには、
地道に、コツコツ、一生懸命生きる人が集まるのだと思います。

最近はご無沙汰していて、しばらくお顔を拝見していませんでしたが、
あのお店がなくなるのは本当に寂しいと思います。
少し疲れたとおっしゃっていたそうですが、
どうぞゆっくりと休んで、夫婦で楽しい時間を過ごして下さい。

後を引き継がれるのは、おなじ川崎のたけくま酒店さんと聞きました。
たけくま酒店の店主 宮川大祐さんも素晴らしい方です。

地道に、コツコツ、一生懸命生きている方だと思います。

落ち着いたら、是非一度訪れてみたいお店です。

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