平成を彩った日本酒:平成21年から25年


平成21年から25年の時代。


平成の時代を最も象徴するのは「若手蔵元杜氏」という言葉であることに異論をはさむ方は少ないでしょう。
農閑期の出稼ぎ仕事として長く酒造りを支えてきた季節雇用の杜氏制度が
農業の変質とともに徐々に廃れ、社員による酒造りが主流を占めるようになったことで、
製造技術が杜氏から蔵元へ移管しました。
また日本酒の需要が漸減を続けるなか、
年間雇用の社員を使うことは蔵元にとって負担が大きいことから、
蔵元自身が酒を造るケースも多く見られるようになってきました。



若い蔵元杜氏としてセンセーショナルに世間を賑わせたのが山形県の「十四代」です。
この酒の成功は多くの若手醸造家に希望を与え、
農大で醸造を学んだ子弟を中心に実家で酒造りを始める若者が増えました。
平成19年から「若手の夜明け」と名付けたイベントがスタートし、
この新しいトレンドに拍車がかかりました。
 

酒造りがベテラン杜氏から若手醸造家に移ったことによって、
酒質にも大きな変化が生まれました。
子供のころから洋食で育った若者たちが求める酒質は世代を経て変化してきたのです。
特に「酸」に対する評価が、彼らの出現を機に大きく変化しました。
この酒質の変化が、結果としてこれまで日本酒を知らなかった若者や女性に受け入れられ、
新しい日本酒の飲酒層を作り出したのです。

平成23年の東日本大震災への復興需要が、

皮肉にも日本酒の中で純米・純米吟醸などクオリティーの高い酒の需要を押し上げ、
その後に続く増加基調につながった背景には、
復興需要によって初めて日本酒を飲んだ若者や女性に、
この若手醸造家たちが造った酒の味わいが驚きをもって受け入れられた結果であると
私は考えています。

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