日本酒のブランド志向

数日前のツイッターの投稿を見ていたら、こんな投稿がありました。

「日本酒ブームが起きていると勘違いし、『日本酒を広めたい!』とか言って結局内輪でイベントやってるだけだから話が進まないんじゃ...」

良く聞こえてくる話です。
日本酒のイベントはどこへ行ってもすごく盛況なのに、売上はちっとも伸びないとか、
色々なイベントに行っても、同じ人ばかり見るとか。
私も仕事柄から、できるだけ多くのイベントに足を運んで、お酒を飲んで人と話をするように心がけているのですが、
「あれ、昨日もお目にかかりましたね」
「この後は、やはり〇〇県のイベントに行かれるのですか?」
といった会話が多いことは間違いありません。

試飲会に慣れた方々には、試飲のマナーという暗黙のルールがあって、
それを乱されるとペースが上がらないので、当初の目標ほどブースを回れなくなってしまいます。
業界のプロ向けの試飲会であれば、まぁそれで何の問題もありません。
でも、そんな常識をもった人が、一般の方々と混じって唎酒や商談をしていたら、とても鬱陶しいこと限りないだろうなぁと思います。

お酒とは香味を味わうものですが、
少しお酒のことを知ると、もっと酒のことが知りたくなり、
徐々に頭でっかちになる傾向があります。
香味を楽しむと同時に、頭で酒を味わうようになるのです。

昔から、ワイン飲みは面倒くさい、
うんちくがうるさい、と良く言われたもんです。
日本酒好きも同じです。

本当に一般消費者に日本酒を飲んでもらいたい、
日本酒の裾野を広げたいと思ったら、
業界は内輪や日本酒好きには目を奪われず、
まったく日本酒を知らない多くの人のことを思うべきでしょう。

今回のコロナ禍で、私たちはいくつかの新しい発見をしました。

その中でも私たちがとても驚いたのは、
外飲みが制限されて家飲みにシフトすると、
普通酒が良く売れて、純米吟醸や生酒などの商品は売れなかったということです。

最近の日本酒ファンからは「過去の酒」かのようなレッテルを貼られた2ℓパックを中心とした普通酒が、この自粛期間には良く売れました。
逆にトレンディ―な日本酒バーや居酒屋で良く売れて、全体に漸減する業界を唯一牽引してきた純米吟醸クラスの酒は、家庭需要にこたえきれませんでした。

どうして、このような現象が起きたのか。
業界はしっかりと検証しなくてはなりません。
そして、これから先しばらくは続くであろう外食を抑制する傾向に対して、
適切な商品開発と市場への投入をすぐに行わなくてはなりません。
柔軟な思考が求められます。

いかにワインが頭でっかちの商品であっても、
家庭で消費されるワインは、500円~1200円の価格帯に集中します。
一般家庭で消費されるワインに、そこまでの高級感やうんちくは必要なく、
フルボディかライトボディ、
辛口か甘口、
もしくはぶどう品種やワイン生産エリアの情報をもって、
自分の予算に合ったワインを消費者は選びます。

日本酒には、そのような選択基準があるでしょうか。
日本酒には、そのような価格帯の商品があるでしょうか。

日本酒ブームと言われながらも、
結局ジャニーズを追いかけるミーハーなコアファンによる一部のブランド志向から抜けられず、
ブランド以上の選択基準も提示されておらず、
そして安価な価格チョイスもない。
これが、日本酒が根本的に抱える大きな問題であると私は思います。

自己批判ばかりしてもしかたない。
同じような気持ちを持つ方がおられたら、是非議論しませんか。

コメント

  1. いつも楽しみに拝読しております。

    「日本酒の裾野を広げたいと思ったら、業界は内輪や日本酒好きには目を奪われず、まったく日本酒を知らない多くの人のことを思うべきでしょう。」
    ◎同感です。

    「外飲みが制限されて家飲みにシフトすると、普通酒が良く売れて、純米吟醸や生酒などの商品は売れなかったということです。最近の日本酒ファンからは「過去の酒」かのようなレッテルを貼られた2ℓパックを中心とした普通酒が、この自粛期間には良く売れました。」
    ◎これは私の実感にも近いです。もし、数字の裏付けがあれば是非、教えていただきたいです。どこかに集計されていたらするのであれば知りたいです。
     私の実感から考えると
    (1)県境を越えることが憚れる事態となって、いつも買いに行く酒屋に行きにくくなったこと。
    (2)経済的先行き不透明な中で支出を抑えたい。4合瓶で1500~2000円台は財布の紐がきつくなった。
    (3)自宅で家族と食卓を囲む機会が増えた。毎晩の夕食での食中酒は、風味や味がしっかりした吟醸系の酒よりも、自己主張の弱めなあっさりした酒の方が我が家の味付けには好ましかった。
    (4)酒瓶がたまると結構な重さと場所を取ることをあらためて痛感。紙パックやペットボトルのごみ捨てまでの手軽さを再認識した。
     ステイホームの時期の検証は、日本酒拡販を考えるうえでいい材料になると思います。
     引き続き、「J'S TREASURE にほんのたからもの」の記事連載を楽しみにしてます。

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