コロナと日本酒業界のデジタルシフト

コロナを機に日本のデジタルシフトが一気に進むだろうと言われています。
リモートワークと言われ始めてもう随分と時間が経ちました。
日本は社会のデジタル化が先進国のなかでも飛びぬけて遅れていると言われ続けました。
でもいったん変わり始めたらスピードは速そうです。

多くの方が無理やり在宅を強いられて、
うまく仕事が回った人もいるでしょうし、
結局何もできなくて、ひたすら家の片づけをしていた人もいるでしょう。
Zoomという初めて聞くアプリが一挙にメジャーになって、
打合せや飲み会にまで、幅広い用途で使われるようになりました。
まさにニューノーマルです。
Zoomのユアン社長によれば、Zoomの使用者は昨年12月に1000万人だったのが、今年の3月には3億人になったとのこと。
その後、さらに数字は伸びていることでしょう。

このようなツールを使った酒蔵見学会も盛んに行われていますし、
セミナーも一挙にウェビナー(ウエブセミナーの略)に移行しました。
すごい勢いです。

行動の素早い方々が次々にこのような手を打ち、
世の中に遅れまいと思う人々は、一生懸命それに参加します。

百聞は一見に如かず、というのとはちょっと違うかもしれませんが、
実際に企画し、参加してみることを通じて、色々なことに気づいてきました。
ウェビナーの威力はそのなかでも抜群です。
今まで100名程度の集客をしていたセミナーが、ウェビナーにすることによって一挙に500名の参加者を得たというような話は枚挙にいとまがありません。
確かに、移動の時間や交通費をかけることなく参加できるウェビナーは便利です。
資料もウエブ上でやり取りができるわけですから、
その場所に行って受講する意味は、その場の空気感と、講演者・受講者との交流だけになります。
逆に、仕事の合間を使って、本当に聞きたいセミナーだけを、どこにいても受講することができるメリットは、どう考えても効率的です。
少人数のリアルと大人数のデジタルを組み合わせたセミナーというのが、これからのセミナーの標準形になってゆくことでしょう。

デジタルシフトがこのように進むことによって、
会議を目的とした出張は大幅に減り、交通機関の利用者は減るでしょう。
リモートワークが継続的になってゆけば、市内交通機関の利用者も減るでしょう。

一方で、デジタルの精度アップが求められるようになり、
動画撮影用のカメラが売れ、
動画編集ソフトなどを使いこなすことが、標準スキルとして求められるようになるでしょう。
世の中は、私などが思いつかない多様な部分で変化し、
そのスピードは加速度的に速くなってゆくでしょう。

日経新聞が主催する世界デジタルフォーラムのウェビナーに2日間参加しました。
5Gという新しい世界標準に向かって、世の中のデジタルシフトがどのように進んでゆくのか。
私には正直少々ハードルの高い内容でしたが、世界の先端技術を競う会社のCEO達の話を聞くことで、多少なりとも自分にとって身近な世界と感じることはできたかもしれません。

さて、デジタルシフトもしくはDX(デジタルトランスフォーメーション)が進み、データが生活のキーを握るようになると、
人間はそのなかでどうなってしまうのだろうという不安感を覚えます。
特にこれから高齢化が進む日本において、デジタルシフトについてゆけない人々はどのように暮らしてゆくのでしょうか。
ついてゆける人種とついてゆけない人種の間に大きな格差が生まれてくるのでしょうか。

大学の親しい先輩で北九州でサンキュードラッグというドラッグストアを経営しておられる平野健二さんが行ったウェビナーに、ちょっとほっとさせられる言及がありました。
「コロナを経て、非接触・非対面が求められるなかで、リアル店舗における情報伝達は困難になり、EC、Amazon Locker等による商品渡しなどの新しいビジネスモデルが求められるでしょうが、そのなかで求められるデータの使い方は、パーソナルマーケティングであるべき。」
高齢化が日本の市町村のなかでもとりわけ高い北九州だからの発想かもしれません。
データを効率化に利用しながらも、マーケティングはあくまで人に寄りそうという発想。
ひとりひとりの顧客のニーズに合わせた情報発信が必要になるという考え方です。

弱者切り捨てというイメージが強いデジタルシフトを、
人に寄りそう形で生かしてゆくという発想は心を和ませます。
このような発想が、デジタル化してゆく日本を良い国にしてゆくと思いました。

もうひとつ。
コロナを経て、人々の価値観が変わったと言われます。
これまでの商品の購買や飲食をストップしてお金を使わなくなったことで、
物を買ったり飲み食いしたりするお金の使い方を見直し、
なんで今までこんなにお金を使っていたのだろう、
本当に必要な物にお金を使っていたのだろうか、と問題意識を持った人が多いと思います。
本当に必要な物、豊かな暮らし、幸せ、というものを考え直した時、
人は改めて本質的な価値を探すということです。

モノづくりは、商品の本質的な価値を磨き上げてゆく過程であると同時に、
消費者のニーズを形にする過程でもあります。
目先から長期に視点を移して、
改めて自社商品の本質的な価値について考えることは、
決して無駄にならぬ思索であると思います。

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