2016年10月18日火曜日

テロワールと市販酒の評価 ①

10年前まではワイン用語だと思っていましたが、
今では時代のキーワードになりました。

ぶどうは収穫した瞬間から酸化が始まるから、
出来るだけ早く圧搾してワインにしなくてはならない。
だから、収穫された土地がワインと密接に結びついており、
さらに採れたぶどうの品質がワインの品質の大半を決定すると学びました。

日本酒の原料は米という穀物ですから、
確かに新米はおいしいけれど、一年かけて食べることが普通であるし、
収穫した瞬間から劣化がスタートするといっても、そのスピードはゆっくりです。
だから、新潟で獲れた米を関西で使うことも可能、広島で獲れた米を秋田で使うことも可能です。
テロワールは日本酒とは無縁だと、何となく思い込んできました。

でも、今ではテロワールこそが日本酒にとって差別化の最終兵器と思っています。
米を巡って、これまで何人かの人に話を伺ってきました。
秋鹿や東洋美人・東一を育てた永谷正治先生、
喜久酔の米を生産する松下さん、
山田錦の生産農家の方々、龍力の本田会長、
五人娘の寺田 優さん、
自然酒の仁井田穏彦さん…

酒に関わっていると、当たり前のことですが農業に触れる機会は多いのです。
ただ、これまでは米の品種と等級、そして自然栽培などの部分に目が奪われていて、
その土地と米との関連性に、いまひとつ注目をしていませんでした。
つまり、
どこの土地で獲れた米であるから、良い酒ができる。
ということについて、本当に腑に落ちていなかったのです。

確かに、山田錦はそれに似た世界を追求してきました。
龍力さんの単一圃場の価値訴求などは、まさにドメーヌ、テロワールを意識した戦略です。
でも、それらは希少性と差別化にはなれど、最高においしいという酒の味までの評価として、
自分の腑に落ちてはいませんでした。

そんな自分にとって大きな転機となったのは、根知男山との出会いでした。
この酒を飲んだ時、五百万石でどうしてこのような味の酒ができるのか、
本当にびっくりしました。
居ても立ってもいられず、無理やりアポをとって渡辺社長を訪問しました。
4~5時間の訪問のほとんどの時間、渡辺さんのお話を伺っていて、
これまで何となくもやもやしていたものが、自分の中で不思議なほどに整理されてきました。

その土地の土壌で、水で、そして気候風土でしかできない米。
それなら誰でもできることですが、
その米が、他のどこの米よりも「おいしい酒」になるということが何より大切なのです。
少なくとも、他のどことも異なる「個性」を持っていることが大切なのです。

これが実現できれば、もう怖いものは何もありません。
まさに、中小酒蔵だからこそできる決定的な差別化であり、
中小酒蔵が目指さなくてはならぬ目標だと思います。
酒蔵は自営であれ契約栽培であれ、地域農業との結びつきを深め、
循環型経済が育ってゆくことでしょう。
地域を観光資源として売り込む材料にもなるでしょう。
蔵元が生き残ってゆくベストのシナリオだろうと思うのです。

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