ビジネスとしての酒

女性は人から見られて美しくなると言います。
酒が新しい世界を拓き、若者や外国人が酒に注目するようになってくると、
酒をめぐる環境が徐々に変化するのを感じます。

親父が若かったころの酒屋の風景は、
いなせな法被姿の職人が夕方の早い時間にひょいと入ってきて、
「親父、酒。」と注文して金を払い、
傍らの味噌樽からしゃもじで味噌をちらっとすくって手の甲に載せペロリとなめ、
桝酒をグイッとあおってお終い。
「ごちそうさん」と言って出ていく。

なんだか、酒というものが日常生活に溶け込んでいて、
ごく自然に単純な売り買いの動作が進んでゆく風景が見えてきます。

飲み屋さんでも同じ。
めんどうくさい説明やメニューは必要なく、
燗具合をお願いして、何種類かのつまみで軽く頂く。
古くから繁盛している居酒屋さんに行くと、お馴染みさんは軽くきれいに飲んで帰ってゆきます。
まぁ、もちろんたまには虎になる輩もいるだろうし、
愚痴をこぼす輩もいるでしょうが、
それも日常の自然な風景のひとつ。

たくさんの人の日常に溶け込んで自然な風景になるなかで、
動作が磨かれて洗練されてきたのが「粋」なのかもしれません。

それから時代が流れて、
ビールやウイスキーやワインに押されて日本酒はすっかり落ち目になりました。
多くの酒のなかで日本酒だけが段違いのスピードで消費者に選ばれなくなりました。
その功罪を論じても仕方がないことなのですが、
そろそろ底にしたいものですね。

また底辺から新しい酒のカルチャーを創造してゆく時代なのかもしれないと思います。
若者や女性が日本酒を「おしゃれ!」と言い、
外国人が日本酒を「ファンタスティック!」と言うようになってから、
日本酒をめぐる新しい様々な動きが出てきました。
品質の革新、
販売方法のリノベーション、
売り場の変化、
料理とのペアリングバリエーションの多様化、
新しい酒器の提案、
日本酒を飲む「場」の創造。

フェイスブックなんかを見ていると、本当に毎日新しい「コト」が考案されているかのようです。
まだまだ出てこいですよ。
色々な人が色々なアイデアを出して、
ビジネスとして酒が本当に面白く、儲かるようにならなくては、産業は発展しない。
飽和するくらい色々なものがでてきてから、
今度は次の洗練された文化に昇華させてゆく。
そんな素敵なビジョンを描くことができればいいですね。
私はその「洗練」を見ることができないかもしれませんが、
「粋」な大人ではいたいものであります。

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