本格焼酎の挑戦を望む!

「本物の焼酎とはこういうものですよ」
「本当においしい焼酎の飲み方はこうですよ」

様々な焼酎の蔵元の方々とお付き合いをするようになって感じたこと。
特に鹿児島の蔵元にはこの傾向が強いのですが、
焼酎の原点や、地元で愛されてきた品質や飲み方に対する強い愛着と誇りを持っている方が多いと感じます。
いかにも九州の男らしい、まっすぐで頑固な姿は、
カッコいいし、素晴らしいと思います。

「いやぁ、でも東京ではもう少し香りが華やかで芋臭くない、すっきりとした酒が売れると思いますよ」
と軽く申し上げた言葉が、
「そんなまがいものの芋焼酎しかわからん奴にうちの焼酎を売って欲しくない」
と、強烈な逆襲を受けて、危うくケンカになりかけたこともありました。
トラウマというくらい、すごく印象に残っています。

自分の生まれ育った地元と、自分の造る酒に誇りと自信を持つことは大切です。
確かにそれが原点だと思います。
でも、
私はやはり今でも変わっていないようです。
市場を学んで、市場に受け入れられる酒質を目指す。
それは、別に自分の原点を捨てるということではなく、
「成長する」ことだと思うのです。

市場は日々変化しています。
人々の嗜好もどんどん変化しています。
昭和の時代とはかなり違う毎日の食事で育ってきた平成の世代に、
昭和の原点を押し付けても無理でしょう。

「麹で作る本格焼酎は、水やお湯で割り、食中酒として原料由来の風味を楽しむ飲み物」
「それが世界のスピリッツと違う、日本の本格焼酎の特徴である」

この定義(?)のような思い入れに、
私はずっとどこか違和感を覚えてきました。
なんとなく、
かつてケンカしそうになった蔵元の言われるような、
こちらの思い込みの押し付けではないのかなという気持ちが拭えませんでした。

先日、中央会主催の飲食店向け勉強会が ぐるなび大学 で行われました。
そのなかで、元レカンのソムリエ 大越基裕さんのレクチャーを聴いて、
長年の私のムラムラした思いに、ひとつの解答が見えました。

大越さんは、
「本格焼酎を割ってカクテルにすることを恐れるな」と言います。
ほとんどの人は、割ってカクテルにするならクセのない甲類焼酎がいいと思っているが、
無味無臭のアルコールで割るのは、素材の風味を薄めているだけで、何の付加価値もつけていない。
カクテルとは、異なるものを合わせて新しい価値を生み出すところに意義があるわけであるから、個性のある本格焼酎を使わなくては、薄めて酔っ払う以上の価値が何もないではないか、ということです。

カクテルというと、なんとなく次元の違うものを思い浮かべるかもしれませんが、
例えばレモンサワーを想像してみたら良いと思います。
レモンサワーは立派なカクテルです。
そして居酒屋の主力商品であり、今はブームとさえ言われています。
大越さんが現在経営しておられるベトナム料理屋では、
蜂蜜などを入れた特製のシロップに漬け込んだレモンを、壱岐の麦焼酎で割ってレモンサワーを作っておられるということです。

そう考えてみると、
芋焼酎の皮と黒麹、そして蒸留という製造過程に由来する特徴的な香り、
ゲラニオール・シトロネオール・リナロールは、柑橘類の香りです。
芋焼酎でレモンサワーを作ってみたくなりませんか?

レモンサワーの市場に本格焼酎が欠かせない存在になったら、
市場の広がりは桁が違います。
色々な人が、様々な個性豊かなレモンサワーを競い合い、
それを店の売りにするような状況が生まれれば、
かなり面白い市場が見えてくると思うのです。



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