自然派ワインと自然派日本酒

最近欧州の展示会に参加した同僚から、ワインの展示なかですごく bio が目立っていたと聞きました。
たまたまお会いしたオーストリアのワイン業者の方に伺うと、確かにその通りだということ。


数年前にオレンジワインというジャンルのワインに出会ってから、個人的にこの飾り気のない、時には濁っていたり、酸化還元臭がしたりするワインになぜか非常に惹かれていました。
吉祥寺の uplink で2本の自然派ワインのドキュメンタリー映画が上映されていたので、めずらしくゆっくりと時間のとれた週末に見てきました。


1本はフランスで bio ワインを作る生産者の話と、ジョージアの伝統製法でワインを作る生産者のはなし。


「僕らは誰にも迷惑をかけていない。自分にとって居心地の良い生き方をしているだけ。」


現代フランスのチャレンジャー達も、ジョージアに数千年伝わる製法を守る生産者も、基本的なスタンスは同じように感じました。
彼等は、その製法を選んだのではなく、「生き方」としてその製法を選び、そこに居続ける「覚悟」を持っているということです。


「僕たちは金持ちになろうと思ってやっているわけではない。お金は生きていけるだけあればいい。」


大きくなること、安価なワインを作ること、お金を儲けて贅沢すること。
資本主義の価値観から一歩進むこと(もしくは一歩戻ること)を選択する人が現れるというのは、
これだけ世界が終末に向かっていると、真剣に考えている人が世界にたくさんいることを思えば当然のことかもしれません。
私も共感します。


「5年もたてば、大手は様々な自然派ワインを作ってくるだろうから、僕らはいつも前進していなくちゃならない。」
「自然派ワインを作るのは手がかからないから楽でしょと言う人がいるけど、僕らは人の何十倍も手をかけて働いている。」


覚悟を決めた生き方が求められています。
世の中の大勢、資本主義の流れに逆らって生きるには、強い覚悟が必要です。


私自身、この20年間はほとんど日本酒の方を向いて仕事をしてきましたが、改めてワインに学ぶことの必要性を感じています。
数千年の歴史をたどってきたワイン作りは簡単にへこたれるものではなく、進化しながら次の時代に生き残ってゆく道を見つけてゆくことでしょう。
日本酒の海外戦略として亜硫酸無添加という日本酒の優位性を謳える時間は、あまり長くないかもしれません。


自然派日本酒も、無農薬であればいい、天然酵母であればいいというものではないのかもしれません。
スタイルやファッションでなく、もっと真摯な生き方としての自然派の姿を自らのなかに持ち、そこで生き続ける覚悟を決めることが出発点なのかもしれません。
共感から生まれるマーケットは強い。
消費者の心に接点を持てば、その接点が消えることはありません。


そんなことを思わされる週末でした。

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