2017年6月15日木曜日

外国産清酒の事情

先日、精米機メーカーの新中野工業さんからお声がけを頂き、
7か国16醸造所の海外産清酒26アイテムをきき酒する機会を得ました。

たまに外国土産として現地で造られた酒を飲むことはありましたが、
これだけまとまって比較試飲をする機会はなかったので、
それはそれは貴重な体験となりました。

1979年に大関がカリフォルニア州ホリスターに本格的な清酒醸造所を作って以降、
宝酒造、月桂冠、桃川、八重垣などのメーカーがアメリカの西海岸に進出し、
清酒を生産してきました。
これらの醸造所は、主として普通酒を生産し、
比較的リーズナブルな価格でアメリカ各地に販売されてきました。
アメリカの日本食レストランで供される酒の多くは、これらの現地生産酒という時代でした。

その頃の和食や清酒に対するアメリカ人のイメージは現在とは随分違いました。
余程の親日家を除いた一般のアメリカ人にとって、
和食は物珍しい食べ物、
清酒はぼやっとした熱燗の酒という程度のイメージであったろうと思います。

2010年頃から、その流れが徐々に変わり、
2013年に和食がUNESCOの世界無形文化遺産に登録されて以降は、
和食が急速に世界のメジャーな食トレンドになりました。
それにつれて日本酒への興味も高まり、
日本から海外に輸出される酒のボリュームも急速に伸びています。

但し、日本から輸入される酒は高いのです。
普通の純米酒が運賃・関税や流通コストを乗せると$30くらいで販売されています。
これでは、なかなか一般の人が日常で消費することはできません。
おのずと現地生産の動きが出るのは当然の帰結です。
また、生酒など、醸造所立地でなくては飲めない酒の魅力も、
現地生産であれば伝えることができます。

アメリカは空前のクラフトビールブームで、
何千ものミニブルアリーがあると言われています。
その中で少しマニアックな指向の持ち主は、
ちょっと変わったものを造りたいと思って、清酒製造に興味を持つというケースもあります。

2015年以降は、加速度的にミニブルアリーの数が増えてきました。
それも完全ローカル資本の醸造所が増えているのが特徴です。

流れはアメリカにとどまりません。
日本酒のファンは全世界に広がりつつあります。
アメリカに近いカナダにはじまり、
ヨーロッパでもスペイン・イギリス・ノルウエー・フランスに清酒醸造所ができました。
最近ではメキシコにも清酒醸造所ができました。
まったく驚くばかりです。

海外産清酒の酒質を「いい酒だ、悪い酒だ」と評価するのは、
もう少し先のことになるのかもしれませんが、
こうした海外の動きは、日本酒業界にとって、それはそれは有難いことと考えなくてはなりません。
日本酒輸出の妨げになるかも、などど小さいことを言ってはいけません。
彼らは、日本酒の海外市場を間違いなく広げてくれる存在です。
市場がなくては、いくら良い酒を造ったところで自己満足を繰り返すだけの話。

それよりも、現地で造る彼らが、どのような味を指向してゆくのかを、
日本のメーカーは、マーケティングの視点から見て行かなくてはなりません。
日本と日本酒に憧れをもって事業をスタートする人たちは、
最初は日本で飲んで美味しいと思った酒を指向するでしょう。
でも、現地での時間が経ち、現地の一般消費者と向き合うなかで、
必ず酒質は新しい方向性を示すはずです。
その変化辿り、
その理由を求めてゆく過程から、
海外戦略とともに、国内戦略の大きなヒントが見えてくるはずだと私は思うのです。

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