新しい容器から見える景色

今年は暖かくて晴天の多い晩秋だったので、都内でも郊外でもいつもより長く紅葉を楽しめたような気がします。情報館は日比谷公園から歩いて5分という素敵な立地なので、ほとんど毎日、昼休みには日比谷公園を散歩するのを日課にしています。

日比谷公園は子供のころから良く父が連れてきてくれた公園で、今でもそのころの景色を残した木々が立っています。木々が色づく晩秋は日々移り行く景色が美しく、ただそこを歩くだけでとても満ち足りた気持ちになれるものです。オールマンブラザーズの「ブラザーズ アンド シスターズ」というアルバムのジャケットを思い出す、と言えば同世代の人はわかってくれるのではないかな。

最近、自分が年齢を重ねてきたのを痛切に感じているのですが、たまたまショーウィンドウに映る自分の姿を見たら、なんだかひどく背中を丸めたおじいさんのように見えてちょっとショックでした。

背筋を伸ばさなきゃ、と思いました。

背筋を伸ばして歩いてみたら気が付いたことがありました。見える景色が違うのです。斜め下に視線を向けて歩いているときに見える景色と、背筋を伸ばして少し上を見ながら歩くときに見える景色はまったく違います。

空が見えます。今年は晴天が多かったので、青空が目に入ります。銀杏の黄色が青空に映えて見えます。木々の向こうに高いビルの上が見えます。太陽の光が見えます。

「斜め上を見て生きなさい。そうすれば人生が変わるよ。」と聞いたことがあります。確かに転ばないように足元に注意して歩くことは大切ですが、斜め上を見ながら歩くと気持ちが明るくなります。なんとなく前向きになる自分を感じます。

同じ世界でも、方向を変えて見るだけでまったく違って見える。そういうことなのですね。

というわけで前置きが長くなってしまったのですが、今日はお酒の容器のことを書こうと思ったのです。どういう話の進め方じゃ。

ビンという容器が普及して以降、お酒はビンに入れられて流通するのが常識になりました。ワイン・ビール・ウィスキーなど世界中のお酒はほとんどビンに入って流通しています。清涼飲料水はいち早くペットボトルに切り替わり、一部のお酒には紙パックという容器も使われるようになりましたが、相変わらずビンの地位は変わらず、新しい容器は「安っぽい」というような理由で付加価値商品には導入されないまま今日を迎えています。

ビンにはリサイクルできるという大きな利点がありますが、町の酒屋さんが少なくなるにつれて、狭域でリサイクルするためのインフラがなくなり、リサイクルは徐々に廃れて、カレット化してからリメイクされるのが主流になってきました。メーカー側も、回収ビンを洗って利用するよりも安価な新ビンを購入する方が手間がかからず破損のリスクも低いことから新ビンを使う業者が増えてきました。

この新ビンを作る会社が茶ビンの生産を中止したことから、今年の冬は1.8ℓビンが手に入らないというような声が聞こえてきました。何だか時代が変わってきたな、と感じます。

人の価値観というものは時代とともに変化します。高級ワインにはコルクを使うという常識がありましたが、コルクを使うよりもスクリューキャップを使った方が品質が安心という理由から、コルク栓が使われない国が現れています。SDGs ということが言われるようになり、ビンの価値についても新しい視点が現れています。生産にエネルギーを使い、運搬にもエネルギーを要し、しかもリサイクル率は下がるという問題がクローズアップされると、ペットボトルや紙パック、レトルトパック、バッグインボックスといった、これまでは高級感がなく安物を入れるための容器というイメージが強かったこれらの容器のプラスの側面が見えてきます。

安物に見えないデザイン性や斬新さ、キャンプなどのアウトドアで使うというような飲むシーンに合った合理性など、こういった新しい容器に可能性が広がっているような気がしています。

アメリカではデビッド・ベッカムの息子のブルックリン・ベッカムが缶入りのSAKEをPRすることが話題になっています。

みんなで少し顔を上げて遠くを見てみませんか?世界への負荷が小さくて、私たちの美的感性も満足させてくれるお酒の世界は、まだまだ作り出せるのではないでしょうか。




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