訪日外国人に日本の居酒屋文化を楽しんでもらうこと
こうじを使った日本の伝統的酒造り技術がユネスコ無形文化遺産に登録されたことで、日本酒・本格焼酎・本みりんの業界は来年またとないプロモーションのチャンスを得ることになりました。さらに来年は(うまくいけば)大阪万博が開催され、訪日外国人は今年に増して多くなるでしょう。
この訪日外国人の需要を取り込むことについて、私は常々思うことがあります。お酒の業界は、この需要を本当に取り込んでいるのでしょうか?
訪日外国人の消費額は、円安の影響も受けて2024年に飛躍的に増加し、対昨年50%増の8兆円規模で着地する見込みと言われています。中央会が行っている国際空港における國酒キャンペーンの結果を見ても、国内消費とはレベルの違う高単価の商品が非常に好調に売れています。訪日外国人の来日目的のトップにくるのは、どこの国の人でも「日本の食」です。おいしい日本の食への関心はとても高く、日本酒業界は当然この追い風を受けるべき立ち位置にあるはずです。
でも、これまでのところ日本酒業界は、特に飲食業界においてこの恩恵をまだ十分に得ていないように思えます。訪日外国人によって寿司、ラーメン、牛肉、天ぷらなどの人気業態や有名な一流料亭は大盛況で、予約が取れないほどのだと聞いていますが、それらの店における日本酒や本格焼酎の消費はそれほど伸びているとは言い難い状況です。
つまり、お店に行く外国人の目的は「料理」であり、食中酒とともに料理を楽しむという消費にはいたっていないのではないかと思われます。オーバーツーリズムと言われている京都の流通業者の話を聞いても、酒類がそれほど恩恵を受けているという印象は伝ってきません。
振返って、私たち日本人の消費形態を見ても、寿司屋や天ぷら屋(ましてやラーメン屋)に行って美味しい料理を食べる時にそれほど多くの酒類を消費することはりません。私達がお酒を消費するのは、「酒を飲むことを主たる目的とした飲食」の場合であることが多いと思います。つまり「居酒屋」に代表される業態のお店です。江戸の時代から、日本人の外飲みを支えてきたのは「居酒屋」でした。そしてこの伝統的な「居酒屋文化」のなかに今も日本人の飲酒文化は根付いているのではないでしょうか。
「居酒屋業態」、もしくは「酒を飲むことを主たる目的とした飲食店」は、インバウンド向けの対応(写真メニュー、英語サイン、キャッシュレス等)が二の次になっているケースが多く、浅草のホッピー通りや博多屋台街などの観光スポットを除いた広く一般の飲食店に訪日外国人を見ることは決して多くありません。
「居酒屋」は和洋中の幅広いメニューを楽しむことができ、また日本の庶民的な食文化を体験することのできる極めてエキゾチックな空間です。お酒を飲むことが大好きな欧米の訪日外国人が嫌いなはずがない訪日体験であること間違いなしです。
例えば、有楽町ガード下で英国人店主のアンディさんが営む「新日の基」は連日外国人でびっくりするくらい超満員の大盛況です。是非一度見に行ってはいかがでしょうか。
欧米人の飲酒量は日本人の比較にならないことを考えると、彼らが楽しく食べて飲む場所を提供すれば、日本酒や焼酎の消費に大きく貢献することは間違いないと改めて思うのです。
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