コロナで見えてきた新しい海外戦略の可能性

 コロナは確かに多くの傷跡を残し、飲食店や観光関連、交通機関などは大きなダメージを受けていることは想像に難くありません。しかし逆に、きっと多くの方々は今回のコロナを通して何か新しい仕事の可能性が見えてきたのではないかと想像します。

インターネットの可能性が大きく私たちの前に姿を現しました。

Zoomの社長がインタビューで「昨年12月に1日1000万人だった参加者が4月には3億人まで増えた」と言っていました。その後の数カ月で恐らくもっと数字は伸びたことでしょう。自分の職場を見回しても、普通にZoomで打合せをしている姿が、ごく自然に見受けられるようになりました。

とにかくリアルなイベントができないから、なにかオンラインで出来ることをやらなくてはというムードが世界中に広まり、またたく間に多くのオンラインイベントが世の中の新しいスタンダードを形成し始めました。

オンライン飲み会、オンライン蔵見学、蔵元とのオンライントーク。オンラインウェビナー(ウエブセミナーの略称)も海外から流入する形で日本にも徐々に見られるようになりました。

音楽業界はオンラインコンサートです。オンラインのコンサートなんて、誰がお金を払って行くものかなどと当初はタカをくくっていましたが、友人の息子がピアノデュオのコンサートをやるから見てくれとたのまれて、2,000円以上のチケット代を払って参加してみたらびっくり。プロのレコーディング技術は凄いですね。音質は素晴らしく、臨場感たっぷりで、しかもホールでは見れない指先の動きや表情までがしっかりと見えます。左上に表示されている「参加者」の数を見たら1500人と表示されていました。

なるほど、これだけ来てくれれば少し安価なチケット代にしても興行として成立するのだと腑に落ちました。

そう考えてみれば、オンラインコンサートは、遠隔地からでも交通費を払わずに参加することができます。他の国からだって、まったく同じように参加ができるのですから、集客のポテンシャルは圧倒的に高くなりますし、たとえ聞き逃したとしても参加者にはアーカイブでの配信サービスがあります。

サザンオールスターズは6月末に無観客ライブ配信を横浜アリーナから行い、3,600円のチケットを18万枚販売し、延べ50万人が視聴したといいます。毎年の年末コンサートはチケットがとれませんが、オンラインなら無制限で、しかも世界中でライブを視聴することができます。しかも高音質で。単純な売上は約6億5千万円です。

交通費や時差を気にしなくても、ライブもしくはアーカイブによってコンテンツを世界中に届けることができる。これは福音です。


昨年度までの中央会の海外戦略の実行計画は、海外イベントへの出展が中心でした。

なかなか一社では参加しにくい海外のイベントに、中央会としてブースを確保し、参加蔵元を募って一緒にプロモーションを行う。規模の大小や多少の内容は異なるにせよ、基本的にそれが海外戦略の中心的な事業でした。

蔵元が徐々に海外営業に慣れるに従って、中央会の役割もイベントの引率者というものから一歩進んだものになってきました。イベントに出展するとしても数日間に20社程度の陣容で試飲・説明を重ねることの意義はもちろんあるわけですが、広い世界の市場で日本酒の確固たる存在感を高めるためには、もっと拡散性が高く、また深く根付く活動が必要です。

ということで、ここ1年あまりは大小さまざまなセミナーを行い、プロモーションと並行して啓蒙活動に力点を置くようになってきました。また一方で、これまで日本で行ってきた教育事業(Sake & Shochu Academy)や招聘事業で縁を得た、海外で活躍する人材とのネットワークを再構築し、中央会の海外イベントに協力していただく関係を徐々に作りつつあります。

こうした活動が実を結びつつあるのが目に見えてきました。例えば今年の7月にフランスソムリエ協会とのパートナーシップ締結にいたったのも、海外イベントにおけるセミナーなどの活動がきっかけになっています。

日本酒に興味を持つ海外の人材は、手助けしたくてうずうずしています。こうした有難い人材とネットワークを築くことで、これからますます新しい展開が間違いなく拓けてくると思います。竹槍戦法のようにひたすら展示会に出かけていくよりも、もう一歩戦略的に、したたかに活動してゆくことが効果的であることに中央会の海外戦略グループは気づき、とても生き生きとした活動を行っています。素晴らしいですね。

コロナによって海外イベントのほとんどが中止になりましたが、それに代替するオンライン商談会やウェビナーなどのアイデアが、各国から続々と寄せられています。

まさに、コロナで見えてきた新しい可能性であると言えるでしょう。

日本の酒情報館では、11月に世界的なオンラインイベント「Sake Future Summit 2020」を企画しています。

日本と世界で活躍する、日本酒・本格焼酎に関わる様々な分野の専門家を集め、2日間にわたってライブセッションを展開し、酒の未来について語り合うイベントです。準備は大変そうですが、とてもやり甲斐のある仕事。

是非楽しみにしていてください。

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