2017年2月20日月曜日

地理的表示(GI)について

昨年末に山形が日本酒のGIに認定されました。
これで、日本酒に関わるGIは、ようやく3つというわけです。

GIといっても、恐らく業界に関わる多くの人にとっても、
何だかピンときていない様子が伝わります。
「で、なに?」 みたいな。

私もそんなひとりです。
それほどGIについて勉強してきたわけでもないし、
GIをとったからといって何が変わるとも思えませんでした。
でもそれは大きな間違いです。
GIは、恐らく日本酒にとって短期的な最大の課題かもしれないと
最近になって確信するようになりました。

日本酒関連で認定されたGIは、これまで3つ。
2005年に認定された「白山市(石川県)」
2015年に認定された「日本酒」
そして、昨年認定された「山形」。

それぞれが何となくバラバラな地域名称であるために、
全体としてのGIの意義が見えなくなっているのかもしれません。
そして10年以上も前に「白山」がGIに認定されているのに、
その事実を認識している市場関係者は極めてすくないですし、
当の白山の酒造家達でさえ、
白山のGIを大っぴらに名乗ってプロモーションしている様子は見られません。

でも、意義は果てしなく大きいのです。
「日本酒」とは、ざっくり言うと、国産米を使用して国内で製造された清酒。
「山形」は、国産米を山形の水で醸し、山形で製造された清酒。
「白山」は、国産で1等以上の醸造用米を白山の地下水で醸し、白山で製造された清酒。
さらに精米歩合70%以下で麹歩合20%以上などという条件もつきます。

このような生産基準の話ばかりしていると、
面白くないし、
しかもGIの本質を見失ってしまいます。
GIとは、本来地域の酒質と結びついたもので、
GIを表示することが、その酒質を保証するものです。

フランスワインのAOCを思えば、さらにわかり易い。
ボルドーの赤ワインと聞いただけで、
私たちはカベルネ・ソービニョンやメルローを中心に造った
濃いルビー色と濃密なアロマとシルキーなボディを想像し、
ブルゴーニュの赤ワインと聞いただけで、
ピノ・ノワールのベリー系のアロマと、
フルーティーで繊細ながらも、酸に支えられた強いボディを想像します。

このような産地イメージが、
それぞれのAOCに結びついていて、
それを知識として積み上げてゆくことで、
もっとワインの理解が深まり、かつ面白くなってゆくのです。

だから、
ワインのラベルには日本酒度や酸度、アミノ酸度などの細かな技術指標はなく、
消費者はAOCの表示だけで、かなり多くの情報を想像することができるのです。

海外から日本酒を見た時、
恐らく各地の産地イメージまで持てる消費者はほとんどいないでしょう。
知識はブランド名までで止まっていて、
「獺祭」は知っていても、山口の産地イメージはない。
「飛露枯」は知っていても、会津の産地イメージはない。
だから底が浅いのです。
「飛露枯」が手に入らない、もしくは予算に合わない時、
何を選んだら良いのかという選択基準が、
少し詳しい(時に思い込みの激しい)酒販店店主や飲食店店主の言葉しかないのです。

日本酒の国際戦略を考える時、
これはゆゆしき問題です。

日本の酒業界は、一日も早くGIを核とした産地イメージを確立するべきです。
行政区域に縛られず、
本当に産地の味わいを合理的指標で共有できる単位。
部落単位でも町単位でも、
どんな単位でもよいし、
小さい単位を包括する、「東北」なんていうGIが多層的にあってもいい。

この議論を地域ですることにより、
テロワールという、何となくわかったようなわからないような議論が、
もっと現実的で、
真に地域を差別化する福音として、認識されるようになるはずです。
地域が残ることによって、
地酒は生き残る意義を見出します。
そこにしかない酒。
他に代替できない酒。

酒が産業として歴史を刻み続けることができるか否か。
酒の未来は、我々の手中にあると言っても過言ではありません。

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