最高の食体験

京都という街は、やはりちょっと特別な場所です。

京都に行くとなると、なんとなくウキウキする。特に食いしん坊の私は、行くと決まったとたんにそわそわして「限られた時間のなかでさて何を食べようか」と、あれこれ考え始める、これがまた楽しいのです。

インバウンドの観光客が日本にたくさん訪れるようになってから、京都の街はすっかり外国人に占領されてしまったかの様相を呈しています。東京の浅草や築地も、観光客のピークシーズンには凄いことになっていますが、でもやっぱり、京都を歩く外国人の様子には、どことなく「夢心地」な雰囲気が漂っているように見えます。

京都は、やはりちょっと特別な場所なのです。

 

さて、今回は京都に住む長年の友人の計らいで、京都の一流のおもてなしを経験する機会を頂きました。

八坂神社の脇を高台寺に向かって登って行く道は、ちょっと奥座敷に入ったような独特の雰囲気があって素敵です。祇園の花見小路をぐっと小ぶりにしたような町家が立ち並び、秘密めいた雰囲気が漂います。その奥に佇む料亭「菊乃井」。ミシュラン3つ星を14年連続でとっているお店です。

こじんまりした車寄せのある玄関は、決して人を寄せ付けないような「格」で威圧するのではなく、気持ちよく肩の荷を下ろせるような、ほっとする雰囲気。玄関からお部屋へ続く店の廊下も隅々まで心の行き届いた静謐な空間です。

「なんだかほっとする」と同席した友人が言っていました。座敷は庭を望む天井が高くて広々とした広間なのですが、空気がやわらかく感じられるような、ゆるやかな気が漂っていました。

すでにマジックにかかっているのですね。暗くなる少し前のうす紫のあいまいな空の色に抱かれてお茶を飲みながら話す時間も、ゆるやかなおもてなしです。



そしてお料理。ひとつひとつの料理を解説し始めたらいやらしいと思いますが、「うちはお客様にお腹いっぱい食べて頂きたいのですよ」とおっしゃる二段重ねのお重に入った八寸に始まる9種の料理と2種のデザートは、本当にボリュームが多くて食べきれないほど。

細部まで心が行き渡った料理と器、そして空間。





授業料としては相当手痛い出費でしたが、でもこればかりは自分で経験してみなくては決して知ることができない一期一会の時間です。

一流のおもてなしとはどのようなものか。日本人として生まれた以上は体験しておきたいですよね。

 

満腹になった後は祇園に流れ、友人が懇意にするお茶屋さん「多麻」に寄って、この贅沢なひと夜を締めくくったのでした。




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