奥州でゆったり酒蔵ツーリズム

秋以降、来日外国人の規制が徐々に緩和されるにつれて、町で見かける外国人の数が目に見えて増えているのを感じます。海外で日本酒や本格焼酎に携わっておられる方々は、日本人以上に日本文化への愛が満ち満ちていて、「ようやく日本に来れました!」と満面の笑顔でお話しになるので、嬉しく、有難く思うと同時に、このような方々の期待を裏切らない業界で、国でありたいものだと思わされます。

円安という条件も重なって、これから来年にかけて間違いなく海外からのインバウンド旅行客が増えてくることでしょう。これはかなり確実に読める未来ですね。

消費の9割を占める国内市場を盛り上げることに力を注ぐことは当然のことながら、伸びている市場に対応するのも当然のこと。私達の業界は、日本に来られる海外の方々に忘れ得ぬ日本酒や本格焼酎の体験をしてもらうことを、もっともっと現実問題として考え、準備しなくてはならないと切実に思います。

酒蔵ツーリズムという言葉は、もう何年も前からお題目として言い続けられています。でも実際に海外から来られたお客様から半日・一日を使って遊びに行ける地方の酒蔵を紹介してもらえないだろうかと聞かれた時に、ここなら間違いありませんよと自信を持ってお勧めできる地域や酒蔵は、実は非常に少ないのです。

例えば東京近郊でどこか良い酒蔵はありませんか?と海外の方に聞かれた時、私たちは条件として何を考えるでしょう。

     安心できる交通機関を使って12時間程度で行ける

     酒蔵として興味深い外観、内観、周りの環境である

     テイスティングができる

     買い物ができる

     蔵の近所で地元ならではの美味しい食事ができる

     蔵の近所に歴史、文化、自然などを感じさせるスポットがある

言い出せばキリがないのですが、このうち4つか5つは満たしていないと、外国人にお勧めするのは難しいと思います。

海外の旅行客というと、まず言葉の心配をする方が多いと思います。たしかにコミュニケーションは大切です。でも自動翻訳の技術はAIの進化とともに驚くほどのスピードで進んでいます。近い将来にかなりのレベルの自動翻訳が行われる時代がくるでしょう。

まずは来て欲しいという気持ちを強く持つことが大切。これがすべてのモトになります。

 

さて、岩手の一関市にある世嬉の一酒造が日本酒造りを再開されると聞いたので、旅のついでに立ち寄ってみました。この酒蔵はJR一ノ関駅から徒歩10分以内で行けるとても便利な立地なのですが、とても美しい蔵です。歴史を感じさせる風格のある建物と、広々とした中庭の空間は、まるでその建築当時から旅行客が訪れることを予想していたかのようです。

しばらく日本酒の製造は休止して地ビールを製造しておられましたが、満を持して改めて創業のもとになった日本酒製造を再開されたのです。素晴らしいなぁ。

季節の花が咲きほこる中庭をめぐって売店やレストラン、博物館などが立ち並び、見学者はゆっくりと時間をすごすことができます。中庭のベンチに座ってぼんやりしているのもいいかも。醸造がスタートしたら、醸造場の見学も始まることでしょう。

一関にはジャズファンなら誰でも知っている垂涎の的「ベイシー」という老舗のジャズ喫茶があります。世嬉の一酒造からは徒歩3分。

また、世嬉の一酒造が中心となって盛り上げてきた一関の「全国地ビールフェスティバル」は、日本一の地ビールフェスティバルと言われています。

もちろん忘れてはならないのは世界遺産の平泉。一ノ関駅からタクシーで20分ほど走れば、日本を代表する史跡、死ぬまでに一度は見ておきたい中尊寺を中心とした建造物や遺跡が、のどかな田園風景のなかに溢れています。

今と昔という長い時間の流れを、ゆったりとした風景とともに楽しむことができる地域。新幹線に乗れば東京から2時間で行ける日帰り圏内の旅先としては、かなりの充実度ですぞ。と、久々に訪れたこの地で確信したのです。






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