東京の新しい都心型マイクロブルワリー

 東京都下の八王子市は都内で一番大きな市です。かつて日本の産業を支えた生糸や繊維の拠点として栄えたさまを今に伝える素敵な花街が残っています。料理屋・待合・置屋、そして芸妓を差配する検番があり、現役の芸妓のお姐さんが活躍しているようで、いいですね。

この貴重な花街文化を活性化させようと、八王子市は伝統文化発信拠点の「桑都(そうと)テラス」をはじめとしたさまざまな施設をオープンし、とかく古臭い雰囲気になりがちな古い街並みを活性化させています。

https://sototerrace.com/about

そんな花街の中心部にある黒塀の老舗料亭「すゞ香」の中に、東京で10番目になる新しい日本酒醸造所が今年の5月にスタートしました。

「すゞ香」の玄関に並んでコンパクトな売店があります。蔵と売店はまだ一般向けにオープンしていないようですが、四季醸造のマイクロブルワリーならではのフレッシュなお酒が飲めて買えるスポットとして、楽しみな場所になりそうです。ロゴを含めて全体がとてもお洒落なデザインでブランディングされています。

料亭「すゞ香」のお部屋も拝見させて頂きました。こちらは歴史ある風情がいっぱいです。天井は高く、座敷には芸妓が歌い踊る別間が併設された、まさに花街の料亭。


この料亭のなかにマイクロブルワリーがあります。

その他醸造酒を含めたマイクロブルワリーやジン・ウィスキー等スピリッツのマイクロディスティラリーが全国に増えていますが、八王子酒造の醸造設備も非常にコンパクトで無駄のない小型設備を、小さな場所で上手の移動させながら使っておられます。

醸造に携わるのは3名。長野の蔵で10年以上の経験を持つ杜氏の磯崎さん、農大の大学院を出た高部さん、そして兵庫の山陽盃酒造さんや三軒茶屋のWAKAZEさんでの醸造経験を持つ西村さんです。「酒造りが楽しい!」と素敵な笑顔が眩しい。 

社長の西仲さんは、地元八王子ご出身の酒類流通のプロとして、明確なビジョンを持っておられます。地元八王子市の伝統文化と共生し活性化させるハブとしての酒蔵の役割、そして地元米を使った酒造りプロジェクトなど、長く続く価値をベースにした新しい都市型マイクロブルワリーの姿を目を輝かせて語って下さいました。

 

コンパクトな設備を集約して四季醸造を行う消費地立地の酒蔵という形態は、流通を使って幅広く商品を行き渡らせるかつての酒蔵の在り方を根本的に変えつつあります。より消費者に近いところで営業を続けるためには、コンスタントに時流にあった商品を供給する技術力と商品企画力、そして上手に見せるためのブランディング力が必要だと思います。

これから他の酒類を含む様々な競合が切磋琢磨する時代が来た時、消費者から支持されるための「共感力」もブランディングの大切な要素です。

彼らの熱量と努力が、日本酒に新しい消費者を連れてきてくれることを祈らずにはおれません。

頑張って欲しいです。

 




 

 

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