それぞれの地方の魅力とその生かし方

最近はなかなか仕事で地方の酒蔵を見て回る機会が少なく、気分がスカッとしません。

自分にとって向上心の源は、新しい出会いによるものが多いのだと改めて感じます。人と会って話すこと、新しい場所を見ること、食べること。そんなものが旅には満ち満ちています。

そんな心に溜まったモヤモヤを晴らすべく、旧友と二人で八戸を訪れてきました。

 

新幹線が通ったおかげで青森は日帰りで行ける場所になりました。なってしまったと言うべきでしょうか。折角本州の端まで行ったのに地元の夕食も楽しむことができないなんて、これはつまらないとしか言いようがありません。

今回は友達と二人のプライベートな旅ですから、何の遠慮も要りません。地元メシを食い尽くすぞ、と目をギラギラさせながら旅路についたのでした。

 

さて、青森県について少し書きましょう。青森県は明治初頭に廃藩置県が行われるまでは津軽藩と南部藩に分かれていて、非常に対抗意識の強いライバルでした。青森県には八戸・弘前・青森という3つの代表的な都市がありますが、それぞれに独特の性格を有しています。東京から見ればどちらも本州の北端であるのですが、日本海側の弘前は雪深いものの稲作に適しているのに対して、太平洋側の八戸は奥羽山脈から吹き下ろす「やませ」という冷たい風のために稲が育たず、酪農や畑作が中心です。海に接し港を持つ八戸は、古くから近代産業を受け入れ、工業都市として発展した一方で、弘前は文化に力を入れて東北有数の文教都市となりました。青森市はそんな八戸と弘前の間に作られた県庁所在地で、政治経済都市として機能しています。

 

八戸を訪問するのは初めてでしたが、案内してくれた旧友が八戸高校出身の地元育ちだったので、心強いことこの上ありません。

八戸の酒蔵といえば八戸酒類という酒蔵が頭に浮かびます。戦時下1944年の企業整備令によって地元の酒蔵が合同して作られた会社で、私がお酒の業界に入ったころの名鑑を見ると、第一工場から第五工場まで5つの蔵がそれぞれのブランドの酒を製造・販売していました。今回の旅では、そのなかから「陸奥八仙」を醸す八戸酒造㈱を訪問しました。

若い兄弟が製造と営業を担って国内外でめざましい活躍を遂げている酒蔵です。

歴史を感じさせるレンガ造りの外観、内部は効率よく改装されて、とてもチャレンジングな酒造りをされている印象です。やる気のある酒蔵には瑞々しい空気が漲っているものですね。

 

今年の私の大きな課題のひとつは、インバウンドの外国人旅行客を地方酒蔵に誘客して、酒と地方文化を楽しんで頂く道筋を作るということです。ですから、今回の旅もそんなことを考えながら時間を過ごしました。海外の方々にとってどのような旅が八戸の魅力を一番伝えることができるのだろうかと。

八戸には弘前のような観光名所はあまりありません。港や工場など、産業都市としての外観は、正直なところあまり観光地としての魅力に溢れているとは言い難いものがありました。でも、港から届く新鮮な海産物、なかでもウニ、イカ、ホタテ、ヒラメ、ホヤなどは、びっくりするくらいの美味しさです。朝から晩まで、漁港の朝市や市内の料理屋で東京では考えられない贅沢な食体験を楽しむことができます。

酒も青森の人にとって大きな楽しみ。タクシーの運転手さんも「八戸の人はとにかく酒を飲むのが楽しみなんだよね」と言っておられたように、ナイトライフも非常に充実しています。居酒屋で地元の酒肴と飲む日本酒もおいしいですが、二次会・三次会で訪れるバーも素晴らしいのです。八戸の北にある三沢空港は米軍と自衛隊が共同利用している空港であるため、八戸の夜には空軍関係者も多く見かけます。私たちがはしごをした3つのバーには、英語が普通に飛び交っていました。

 

八戸のもうひとつの魅力は「自然」だと思います。

八戸から南に八戸線を30分ほど下ってゆくと、種差海岸という美しい景勝地があります。ゴルフ場のように広々とした天然芝生の向こうに海が広がる雄大でとても美しい海岸線です。八戸線沿線の蕪島から南は、このような美しい海岸線が続きます。

今回の旅でたまたま遭遇したフランス人の友人セバスチャンさんは、二人のフランス人の友人と一緒に3日間のトレッキングを楽しむのだと言っていました。この美しい海岸をトレッキングして地元の民宿に泊まって海産物と酒を楽しみ、翌日は山に登る。単なる観光地をめぐるツアーよりも、ずっと楽しそうなコンテンツができそうです。

八戸の旅はこれだなと直感しました。

満足度200%のおすすめツアーになりそうですぞ。まずは行ってみるべし。








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